「大草原の小さな家」にはインディアンがときの声をあげて、移住者との間に緊張が走る話がありますが、同じようなことがデ・スメットでもありました。インディアンの赤ん坊のミイラに興味を持った医師が、調査のために遺体を盗んだからです。遺体が両親のもとに戻るまでの間、毎日、インディアンはときの声を上げ、武力での解決も辞さないと、威嚇行為に出たため、移住者との間に高い緊張が走りました。
ミイラを盗んだ本人はとっくに逃げてしまったので、 迷惑をこうむったのは残された人たちでした。まったく関係のないのに、白人と言うだけで、武力衝突に巻き込まれそうになったのですから。
でも、赤ん坊が無事に戻ると、インディアンたちは誰も傷つけずに居留地へと引き返しました。
ワイルダーはダコタからミズーリへ向かう旅の途中、美しい川をみて、「わたしがインディアンだったらもっと白人の頭の皮をはいでやるのに」と、旅日記に記しました。インガルスを含めた白人の移住が、インディアンを追い詰めていたのを理解していたと読み取れる発言です。
それから数十年後、ワイルダーは西部開拓を担った人々の誇りを描いた作品を出版しました。作品中で、自由と独立を高らかにうたったワイルダーは、移住者の自由は先住民の犠牲の上に成り立ったものだと気づいていたはずです。小さな家を執筆しながら、彼女の胸には、どのような思いが去来していたのでしょうか?