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PGH キャップ&フローレンス・ガーランド DK12

ローラの学校の先生だったフローレンス・ガーランドは、1880年当時、18歳で、デ・スメットの公立学校の最初の教師でした。その学校は資材も労働も、町の人々のボランティアによってたてられたもので、先生の給料はひと月に20ドルでした。 フローレンスは1887年に材木商だったチャールズ...

2014年4月13日日曜日

PG57 結婚

「この楽しき日々」によれば、アルマンゾとローラは秋に結婚する予定だったのに、姉のイライザ・ジェインと母親が盛大な結婚式を計画していると知って、その前に結婚することにしました。式にはブラウン夫人、アイダ、アイダの婚約者のエルマーが出席。ローラは黒いカシミアのドレスを着て式に望み、ブラウン牧師は、約束どおり、「従う」という言葉は使いませんでした。その後、二人はインガルスの家で食事をして、二人の新居へと向かいました。

「パイオニア・ガール」によると、二人が結婚式をあげたのは、八月二十五日の午前十一時。式には証人としてアイダとエルマーが出席しました。それからインガルスの家で食事をして、新居へと向かっています。
結婚式で着た黒いカシミアのドレスや新居の様子は、細かな描写がありますが、インガルスでの食事の様子はほんのわずかしかありません。
「この楽しき日々」では、インガルスの家を去る哀しみと新しい暮らしへの喜びが半々に描かれていますが、「パイオニア・ガール」では、自分の家を持った喜びの方が強く感じられます。

「小さな家」シリーズは「この楽しき日々」が最終巻となりました。「なぜ続きを書かないの?」と問われたワイルダーは、「悲しいことを書かなくてはならないから」と答えたとそうです。ハッピーエンドで終わらせたかったのでしょう。
でも、ワイルダーは、大人向けの作品の出版にも興味を示したこともあったそうです。おそらくそれが「はじめの四年間」だったのではと推測されています。

「はじめの四年間」は話の上では「この楽しき日々」の続編にあたりますが、 実際に書かれたのは、それよりもかなり前だったとされています。「はじめの四年間」はワイルダーが他界してから発見されたものですが、レインは出版しませんでした。 「はじめの四年間」の挫けそうになるローラではなく、 「小さな家」の強いローラのイメージを守りたかったのでは、と言われています。   でも、 ローズが逝去すると、 弁護士だったマックブライドは原稿を出版社に持ち込みました。 おそらく彼はワイルダーやレインが「小さな家」に込めたメッセージをくみ取れなかったのでしょう。マックブライドの執筆したローズの物語を読むとそう感じることがあります。

その後、 「小さな家」のローラと「はじめの四年間」のローラの違いに気づいたローザ・アン・ムーアの鋭い洞察力によって、 レインが執筆に深く関わっていた事実が明らかになりました。原稿や手紙が公開されたこともあって、 事実と創作との違いや、反ニューディールだったワイルダーの政治見解といった新たな研究が進められることになりました。

「この楽しき日々」と同じように、「パイオニア・ガール」も結婚で幕を閉じます。ですから、この「パイオニアガール」も今回で最後となりました。おつきあいくださってありがとうございました。

2014年4月10日木曜日

PG56 ウィルキンス学校

「この楽しき日々」では、二級教員免許を取ったローラは、ウィルキンス学校で教壇に立つことになりました。下宿をしていたウィルキンスさん一家はいい人たちで、可愛い生徒にも恵まれて、ローラは心から楽しんでいました。
二級の教員免許をとったのは、「もっと大きな学校で、もっとお給料のいいところで教えたいから」と、ローラは説明しています。


でも、「パイオニア・ガール」によると、ウィルキンス学校で教えることになったのは、いろんな事情から高校を卒業ができなかったのと関係があったようです。
また、学校の生徒の一人は、もの覚えがわるく、ローラは相当な忍耐力を強いられました。オーエン先生が痴呆の真似をしている生徒を鞭打って正したのを思い出して、それをちらつかせたこともありました。もっともローラは鞭を打つと思うと、みぞおちが痛んだということですから、そんな気になれなかったようですが。それに、鞭打ちと聞いたとたん、その子は勉強に身が入るようなったので、その必要もありませんでした。


現在では体罰は禁止されていますが、「農場の少年」や「大草原の小さな町」には教師が生徒をむち打つ場面があります。アメリカの書評を読んでいると、体罰について警告していたり、体罰をのぞけば推薦できる本と書いてあるものをみかけるようになりました。なかには「時代遅れだ」というものも読んだことがあります。








2014年4月8日火曜日

PG55 プロポーズ

「この楽しき日々」によれば、アルマンゾがローラにプロポーズしたのは、歌の学校が終わって、馬車で帰宅する途中、星明かりの下でした。「婚約指輪を贈りたい」というアルマンゾに、「誰がくださるかによるわ」とローラが返し、「僕だったら」と問われると、「指輪によるわ」と答えています。そして、次の日曜日にアルマンゾが、ガーネットと真珠の指輪を贈って、二人は初めてキスをしたとなっています。


「パイオニア・ガール」では、婦人会の親睦会を早めに抜け出して帰宅するときでした。「君が婚約指輪を欲しいんじゃないかと思って」ときかれると、ローラは驚いてはっと息をのみ、「誰がくださるかによるわ」と答え、さらに「僕だったら?」と問うアルマンゾに、ローラは素直に「イエス」と答えました。
その晩、家の前で馬車を降りたローラが「おやすみのキスをしてくださらないの?」と尋ねると、初めて二人はキスを交わしました。そしてマンリーと婚約したのか、 それとも星明かりや大草原と婚約したのか、自分でもよくわからないまま家の中に入って行った、となっています。



現代の私たちからみると、堅苦しいおつきあいですが、現代の男女の交際よりもロマンチックな香りが漂っているような気がします。

2014年4月6日日曜日

PG54 独立記念日2

「大草原の小さな町」には、デ・スメットで行われた独立記念日の式典にとうさん、ローラ、キャリーが参加して、ローラが自由に目覚めるくだりがあります。自由と独立は「小さな家」の大きなテーマですから、ローラが自由に目覚めるくだりは大きな意味を持ちます。
この部分はローズ・ワイルダー・レインが手を加えたと言われています。リバタリアンだったレインは個人の自由を唱え、納税は自由の侵害だと、所得税にも反対していました。今、彼女が生きていたら、茶会(Tea Party)の先頭にたって国民皆保険に反対していたでしょう。日本で刊行されているレインの伝記「大草原のバラ」は、ローズを自由主義者と紹介していますが、一般的に日本でいう自由主義者はリベラリストです。ローズはリベラリストではありませんでした。リバタリアンをあえて「自由主義者」と訳したのは、執筆者と訳者の政治的見解なのかもしれません。


また、「農場の少年」の独立記念日の章でも、とうさんが、アメリカの成り立ちと農夫の誇りをアルマンゾに教えています。
「小さな家」シリーズで独立記念日は特別な大切な日と描かれています。


ところが「パイオニア・ガール」では、ウォルナットグローブでの独立記念日の式典にはふれていますが、デスメットでの独立記念日の演説もローラが自由に目覚める話もありません。別の年の独立記念日には触れてはいますが、原作同様ローラとアルマンゾは式典には参加しません。その日の午後、二人は馬車のレースを楽しみ、晩に花火を観に出かけていて、新調したばかりのドレスや、馬のバーナムとスキップの描写が続いています。


「小さな家」にはニューディールに反対だったワイルダーとレインの政治的見解が流れていると言われています。でも、「パイオニア・ガール」の執筆時には、政治的なイデオロギーを埋め込むのを考えていなかったことがうかがえます。

2014年4月4日金曜日

PG53 プライド

ネリー・オルソンは三人の女性を基に創られた創造上の人物なのはよく知られています。その一人にステラ・ギルバートがいます。「この楽しき日々」でアルマンゾとローラたちと馬車のドライブに行ったネリーは、ステラ・ギルバートがモデルになっています。

「パイオニア・ガール」によれば、ステラが馬車のドライブに来るようになったのは、家事を任されて朝から晩まで働いているステラに同情したアルマンゾが、息抜きにと誘ったからとなっています。
ローラは、病気で一日中、ベッドで横になっていたステラが、夜になると元気になってダンスへ行くのを知っていましたが、自分が口を出すべきではないと反対はしませんでした。

でも、何度かドライブに行くうちに、彼女のふるまいに我慢できなくなったローラは、来週も皆でドライブに行こうと言うアルマンゾに、二人のうちどちらを選ぶか決断を迫ります。

「ネリーをドライブに連れて行きたいならそうしてください。でも、私を迎えにこなくてけっこうよ。おやすみなさい」
そういうと静かに家に入ってドアを閉めました。「この楽しき日々」

「パイオニア・ガール」でもほぼ同じように書かれています。「私とネリーとどちらを選ぶの?」なんて迫らないところがいい。こんな風にプライドを保てるローラはかっこいいです。アルマンゾがローラを選んだのも、そんなところに惹かれたのかもしれません。


2014年4月2日水曜日

PG52 コルセット

「大きな森の小さな家」によれば、結婚前のかあさんのウエストは、とうさんの両手にすっぽり入るくらい細かったそうです。そんなに細かったのなら、かなりきつく締め上げていたのでしょう。メアリーは寝るときでさえコルセットを身につけていましたが、ローラはきついコルセットが我慢できませんでした。


「パイオニア・ガール」によれば、ローラはデ・スメットで迎えた最初の春からコルセットを着け始めたといいます。ただし正装するときだけで、それも、きつくは締めあげたりはしませんでした。そんなローラにかあさんは、
「私のウエストは、とうさんの両手にすっぽり入るくらい細かった・・・」
と言って説得しようとしましたが、ローラは、
「私は誰にもウエストを触らせたりなんかしないわよ」と一蹴したそうです。


コルセットをきつく締めると内蔵の位置がずれてしまい、身体に影響を及ぼすため、医師はきついコルセットに警鐘を鳴らしていました。でも、ファッショナブルでいたい女性はきつく締め続けていたといいます。理想のウエストサイズは十八インチだったといいますから、四十五センチくらいでしょうか? 昔のコルセットは現代のハイヒールに通じるところがあるかもしれません。


社会の価値感に疑問を持たないメアリーと疑問を持つローラ。コルセットにも二人の性格の違いがよく表れています。そんなローラですが、バカバカしいと思いながらも流行だからとフープスカートをはいていました。やっぱり女の子ですね。晩年のワイルダーは、昔のファッションだったフープを、呆れたように「樽のようだ」と述べていました。