メアリーが失明したとき、診てくれたのがホイト先生でした。ホイト先生は「小さな家」にはまったく描かれていませんが、「パイオニアガール」には何度も登場します。
このホイト先生、うさん臭い人物だったようで、医師のモラルが問われるのは、いつの時代でも、どの国でも変わらないようです。
バーオークのホテルには、マスターズ家の甘やかされた年頃の娘がいて、婚約していたホイト先生を誘惑して性的な関係を持ち、結婚しました。先生が婚約していたのは、ローラを養女にしたいと言って来たスター夫人のお嬢さんで、スター夫人のご主人も医師でした。けれども、その五ヶ月後、ホイト医師の妻は内臓疾患で亡くなりました。性的な関係が原因だったと言われています。ローラはとうさんがかあさんに、「先生を奪ったりしなければ、こんなことにならなかったのに」ともらしているのを耳にしています。
「パイオニアガール」は、ホイト先生は奥さんを使って何かの実験していたとも述べています。
マスターズ家にはアルコール中毒のウィルがいました。バーオークのホテルのドアに、銃をぶっぱなした人物です。酒場から遠ざけておくために、父親がウィルをウォルナットグローブに連れて来たのに、ホイト先生はウィルに酒を勧めていた、財産を狙っていたのでは、と「パイオニアガール」は記しています。
注釈によると、そのホイト先生は、妻がなくなってひと月後にほかの女性と結婚しました。ホイト先生の履歴書には、短かった結婚についても、スター医師のもとで見習いをしていたことも触れていませんでした。
ワイルダーはホイト先生を好ましい人物には描いていません。ホイト先生がメアリを診たとき、ワイルダーはどんな思いだったのでしょう?
マスターズの娘が先生を誘惑したとき、ワイルダーはまだ小学生でした。ホテルで働いていたといえ、小学生が性に関する大人の醜聞を詳細に知っていたことに、何よりも驚かされます。