夜逃げしたインガルスは、ウォルナットグローブへ戻ると、とうさんが新しい家を建てるまで、組合教会の教会員だったエンサインさんの家に、同居することになりました。
エンサイン家には、三人の子どもたちがいて、一八七七年当時、いちばん下のハワードは九歳ぐらいでした。
ハワードはローラに気があったらしく、大きくなったら結婚して欲しいと、ローラにプロポーズしました。ローラはしばらく真面目に考えていましたが、ある日、ローラが別の男の子と遊んでいたら、ハワードが泣き出してしまいました。そのときローラの答えが決まりまったそうです。「No!」
とうさんが家を建てると、一家は新しい家へ引っ越しました。エンサインとの同居は楽しかったけれども、グレイスが泣いても家族だけなら気を使わなくても良かったからです。
とうさんは家を建て終えると、町に家を借りて、肉屋を始めました。どの家も保存しておいた肉を使い切ってしまったので、とうさんの肉屋は繁盛したようです。
当時、夏の間、鶏肉以外の肉はなかった、肉をとっておけないため、誰も豚や牛を屠殺する人たちがいなかった、とワイルダーはエージェントに説明していました。説明しなければならなかったということは、「パイオニアガール」の執筆時には、あのころの生活がすでに遠くへ過ぎ去ってしまっていたことを意味します。
「大きな森の小さな家」には屠殺のエビソードがあります。ブタの膀胱を風船代わりに遊んだり、火であぶったブタのしっぽをハフハフいいながら食べたりと、楽しい想い出が綴られています。でも、この話は「パイオニアガール」にはありません。
でも、「はじめの四年間」の屠殺のエピソードでは、自分が屠殺するのとかあさんを手伝うのとは違うと書いているので、「パイオニアガール」に書かなかっただけで、実際には体験していたのでは、と思います。