新しい町が好きだったとうさんは、バーオークを、鉄道もない死んだような町だと思っていました。経済的にも苦しく、西部へと帰りたかったけれども、借金をすべて払ってしまうと、お金が残りませんでした。そこで大家のビスビーさんに、後で送るから家賃をまってくれるように頼んだところ、聞き入れてもらえず、もし家賃を払わないなら、馬を取り上げて、それを売って家賃の代わりにするとまで言われました。
激怒したとうさんは、「今までどんな借金もちゃんと払って来たが、老いぼれの成金ケチ野郎には、ビタ一文払うもんか」と夜逃げすることにしました。以前、一緒に働いていた人が雌牛を買ってくれて、手を差し伸べてくれたのです。
子どもたちが夜中に起こされると、すべての用意が整っていました・・・・と下書きの「パイオニアガール」ではなっています。
けれどもバイ版の「パイオニアガール」では、夜逃げを正当化するように手が加えられています。法的にはビスビーさんが有利で、もしも家賃を払わずに去ると、とうさんは逮捕されてしまう、するとスター夫妻がローラを養女に欲しいと言って来た、と養女のエピソードがここに組み込まれています。その結果、家族がバラバラにならないように夜逃げをしたと、とうさんを弁護するようになっています。
「小さな家」のとうさんは、いつも家族を守る、頼りがいのある男に描かれていますが、「パイオニアガール」を読むと、実在のチャールズ・インガルスは、経済的に家族を支えるのも難しかったのがわかります。
日本でドラマが大人気だったころ、たしか有名な評論家の対談だったと思いましたが、
「大草原の小さな家の父親が理想だという声をよく聞くけれども、『ああいう強い男であれ』というのは、弱い男たちにとってしんどいものだ」
と述べていました。
ネットで検索していると、「小さな家」のインガルスが理想の家族という女性の声をよく見かけます。また、最近の日本の女性たちは、専業主婦志向が多いとも聞きます。彼女たちは「パイオニアガール」の経済力のないとうさんをどう評価するのでしょうか?
経済力のない夫や父親を責めたりせずに、自分も働いて、共に家族を支えていたキャロラインやローラは、自立した女性だなと思います。