「パイオニア・ガール」では、インガルスがペピンに暮らしていたとき、マーサおばさんの家に遊びに行くエピソードがあります。マーサはキャロライン・インガルスの姉で、二歳年上でした。
マーサは十四人の子どもがいましたが、「パイオニア・ガール」に登場するのはその半分です。ローラたちが家につくと、幼いいとこと双子の赤ん坊の三人だけで、あとは皆、学校に行っていました。その学校は、彼ら以外、スウェーデンの子どもたちばかりで、いとこたちはスウェーデン語も英語も出来たそうです。(ペピンの近くにストックホルムという町があるように、あの辺りはスウェーデンの移民が多かった)。
食事に戻って来たいとこたちと、お昼を食べ終えると、ローラとメアリも一緒に学校に行きました。校庭では、男の子も女の子も雪合戦をやっていて、ローラも加わります。そのときのエピソードはローラの性格をよく表わしています。
ガスという男の子がローラをつかまえて、雪でローラの顔をこすったのです。ローラは逃げようとしましたが、ガスは放してくれません。ガスはもう一度、ローラの顔を雪でこすろうとしました。ガスの指がローラの口のあたりに来たそのときです。ローラは思いっきりガスの親指を噛んだのです。 ガスは悲鳴をあげて、指をふりほどくと親指から真っ赤な血が流れ出ました。いとこのウィルは、ローラを見て,次にガスの親指をみていいました。
「ガス、これでローラのこと、かまうなってわかっただろ?」
ガスがどこの誰だかわかっていません。注釈は「ミステリー」となっています。
また、次のエピソードからは、ローラがどんな躾を受けていたのか、垣間見えます。
マーサおばさんの家のロフトでローラとメアリがいとこと遊んでいると、大騒ぎになりました。ウィルがナニーの髪の毛をひっぱったのでナニーが泣き出し、ローラがジョーの顔をひっかいたのでジョーがローラを追いかけまわし、 メアリとレッティがジョーを捕まえようとしたのです。するとマーサおばさんが、かあさんに言いました。
「上に行って子どもたち全員のおしりを叩いて来てちょうだい。そのあと私も行くから」
ウィルとジョーはお行儀が悪かった、ナニーは泣いたから、ローラはひっかいたから、メアリとレッティは騒ぎを大きくしたからと、かあさんが皆のおしりをたたくと、 静かになったのでマーサおばさんの出番はなかったそうです。
注釈者ヒルは、「読者はキャロラインの別の側面を見るだろう。「小さな家」シリーズのかあさんよりも、実在のキャロラインは躾にはかなり厳しかった」と書いています。
最近の北米では、手をあげるのはもちろん、おしりを叩くのさえ良くないとされているのでそう感じるのかもしれません。私の同僚にも、親に叩かれたことがないという人がけっこういます。
でも、昔はそれが普通で、かあさんの躾はとりたてて厳しくなかったのでは、と個人的には思います。
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