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PGH キャップ&フローレンス・ガーランド DK12

ローラの学校の先生だったフローレンス・ガーランドは、1880年当時、18歳で、デ・スメットの公立学校の最初の教師でした。その学校は資材も労働も、町の人々のボランティアによってたてられたもので、先生の給料はひと月に20ドルでした。 フローレンスは1887年に材木商だったチャールズ...

2015年1月28日水曜日

PGH ジョージおじさん

「大きな森の小さな家」のじいちゃんの家のダンスパーティーにはジョージおじさんが登場します。とうさんはジョージおじさんを「すっかりあら男になっちまったよ。戦争から帰って来てからな」と言っていました。でも、ローラはジョージおじさんがダンスの相手をしてくれたとき、気に入ってきました。ジョージおじさんは好意的に描かれていますが、「パイオニア・ガール」では、「嫌いだった」とはっきり述べています。

「大きな森の小さな家」では、おじさんは十四歳のときに鼓手になりたくて家出をしたとなっています。でも、史実と照らし合わせると、一八五一年七月生まれのジョージ・W・インガルスは、南北戦争の終結時、まだ十三歳でした。
軍隊でのジョージの足どりを正確につかむのは不可能ですが、十一歳になる直前の一八六二年七月にウィスコンシンの歩兵隊に志願していて、三ヶ月後の十月に脱走しています。歩兵隊に記録されているジョージのミドルネームや出身地は、ほんとうのものではなく、偽ったのかもしれません。
もしも十月に脱走したとしたら、彼はミズーリやアーカンソー周辺にいた可能性があり、戦争が終結するまで南軍の脱走兵と一緒に、家畜や小麦を盗んでいたとも考えられます。
下書きの「パイオニア・ガール」では、ジョージについてほとんど触れていませんが、ブランディット改訂版とバイ版では、戦争によってジョージは人が変わってしまい、雌牛を盗んで逮捕された、戦争が終わったのにわかっていない、という記述があります。

ジョージおじさんはジュリア・バードと結婚して、一九〇一年、四十九歳でウィスコンシンで亡くなりました。

荒くれだったようですが、なかなかのイケメンでした。写真はこちらから




2015年1月26日月曜日

PGH「パイオニアガール」の版

回想録「パイオニア・ガール」にはさまざまな版があるが、今回出版されたのはワイルダーによる手書きの下書き原稿である。はぎとり用紙六冊に鉛筆で書かれたもので、レインの手が加えられていないこともあり、これがいちばん事実に近いとされている。一人称で書かれ、大人の読者を対象に執筆されたノンフィクションだ。
ワイルダーは一九三十年五月にこれを書き上げてレインに渡した。添削してからタイプライターで打ち、出版社に送るよう期待していたと思われる。

「パイオニア・ガール」は何度も書き直されたので、いくつもの版がある。年代順に並べると、下書き原稿→ブランディット版→ブランディット改訂版→児童向け版→バイ版があり、下書き原稿以外はいずれもレインによる手が加えられている。ブランディット版とバイ版というのは、レインのエージェントだったカール・ブランディットとジョージ・バイの名前からつけられた。

児童向け版は、レインがブランディット版からウィスコンシンの話の部分のみを抜き出したものだ。児童向け版はレインがワイルダーに断りなく着手したもので、当初、ワイルダーはこの原稿の存在を知らされていなかった。レインは大人向けの「パイオニア・ガール」と、児童向けの「パイオニア・ガール」の原稿を準備していて、二本とも売り込もうと計画していたらしい。

「パイオニア・ガール」の下書き原稿は一人称で書かれた大人向けのノンフィクションだが、児童向け版は老婦人の視点で語られたフィクションである。この版は「おばあちゃんが小さな女の子だったころ」(When Grandma Was a Little Girl)というタイトルで知られている。一人称のノンフィクションから老婦人の語るフィクションへと変えたのは、レインだった。ワイルダーはこの児童向け版を発展させて「大きな森の小さな家」を完成させた。

大人向けの「パイオニア・ガール」も出版社を見つけられなかったが、「小さな家」シリーズの基になった。ワイルダーはさまざまなエピソードを発展させたり削除して「小さな家」シリーズを完成させた。レインのベストセラー「大草原物語」と「自由の大地」も、「パイオニア・ガール」をヒントに創作された。

今回出版された注釈付きの「パイオニア・ガール」は、下書き原稿に 注釈を加えたもの。その注釈では上記の各版との違いも扱っている。

このブログには、タイトルがPGまたはPGHで始まるページがある。PGはバイ版の「パイオニア・ガール」を扱っていて、注釈付き「パイオニア・ガール」が刊行される以前に、私がアーカイブから原稿を取り寄せて紹介したものだ。PGHで始まるページは、今回刊行された下書き原稿の「パイオニア・ガール」を扱っている。

なお二◯十五年以降、このブログのページで「パイオニア・ガール」と言う場合、下書き原稿を指す。他の版の「パイオニア・ガール」を指す場合はどの版か記すことにする。







2015年1月25日日曜日

PGH 注釈付き「パイオニア・ガール」の出版

去年の秋、ようやく注釈付きの「パイオニア・ガール」がアメリカで出版されました。「パイオニア・ガール」は以前からアメリカのファンの間で知られていて、アーカイブから取り寄せて読んでいる人たちも多く、さまざまな研究者が引用しています。このブログで以前に紹介した「パイオニア・ガール」も、アーカイブから取り寄せたものを使っています(PGと記されているページ)。
でも、今までファンが読んでいたのは、レインが添削した「パイオニア・ガール」です。今回出版されたのはワイルダーが執筆した下書き原稿で、レインの手は入っていません。

出版されたばかりの「パイオニア・ガール」が届いたとき、箱をあけてびっくりしました。アルバムくらいの大型本で、ズッシリするほど重く片手では持てません。さらにびっくりしたのは、注釈付きの読み物だと思っていたら、かなり詳細な研究書で、注釈が本文の何倍もあるのです。カンザスの話は全部で二十二ページありますが、そのうちの十八ページは注釈で、本文よりも小さな字でびっしり書いてあります。注釈を担当したパメラ・スミス・ヒルはこの本を「ワイルダー百科事典のようなもの」と言っていましたが、まさにそのとおりです。
熱心なファンの多いアメリカでは大好評で、たくさんのレビューを目にします。注文が多すぎて印刷がおいつかず、多くの人たちが心待ちにしているという記事が繰り返し報道されています。そんな記事を読むたびに、アメリカ人にとっての「小さな家」の重みを改めて感じます。

先日、日本の大学の先生が、「クラスで大草原の小さな家の話をしたら、三分の二の学生が知らなかった」とツイッターでつぶやいていました。「大草原の小さな家を知ってるといったら昭和だねといわれた」というツイッターもありました。このようなつぶやきをよく目にします。
 そんな日本で、「パイオニア・ガール」の邦訳が出るのかどうか気になるところですが、数少ないワイルダーファンのために、このブログでかいつまんでご紹介します。(ただし、いつまで続くかわかりません・・・・!)

「パイオニア・ガール」はカンザスの話から始まってローラの結婚で終りになります。ほんとうだったら「パイオニア・ガール」の順番どおり、カンザスの部分からブログに載せるべきですが、いろんな事情から、ウィスコンシンの話の途中からアップすることにします。順番も前後することがありまので、ご了承ください。