インガルスが馬車でダコタへ向かう時に、守ってくれたのがインディアンとの混血のビッグ・ジェリーでした。ビッグ・ジェリーは創作人物かと思っていたら実在の人物で、「パイオニアガール」にも登場します。
毛皮産業には、主にフランス人が関わっていたため、フランス人とインディアンの混血が大勢いました。もしも、
ビッグ・ジェリーがダコタやミネソタの出身なら、スー族か、スー族関連の部族か、オジブエ族の血をひいているだろう、けれども、ワイルダーは、彼はカナダ出身のフレッド・フィールズの義理の兄弟だと述べている、と注釈には書かれています。
「パイオニアガール」によると、フレッド・フィールズは、鉄道の飯場でとうさんの仕事の手伝いをしていた男で、工夫で混雑するまかない場を嫌い、インガルスの家で食事をしていました。その彼の義理の兄弟がビッグ・ジェリーでした。とうさんとフレッド以外、飯場の連中は、気性の荒いジェリーを恐れていました。ジェリーとある男が対峙しているのを目にしたフレッドは、ジェリーが殺人を犯しかねないと一目散に走りより、二人の間に入って、ケンカをやめさせています。ジェリーは馬泥棒の疑いもかけられていました。
でも、ジェリーには別の顔もありました。「シルバーレイクの岸辺で」では、かあさんはインディアンの血をひくジェリーを嫌っていますが、「パイオニアガール」では心根の優しいジェリーに、インガルスの家族は、みな、好意を抱いていて、ジェリーはインガルスの家で、食事をすることもありました。ジェリーが病気のジョニーじいさんの看病をする話は、「パイオニアガール」にも見られます。
「シルバーレイクの岸辺で」では、とうさんが飯場の連中に給料の件で詰め寄られたとき、とうさんは銃をしのばせて、給料を隠しておくようかあさんに頼んでいました。このとき、ジェリーが現れて、とうさんは危機をしのぐことができました。でも、これは創作です。「パイオニアガール」では銃も給料もジェリーもありません。とうさんが連中に言い聞かせて、その場をしのいだのです。
フレッドは1880年当時27歳で、鉄道工事現場の監督を勤めていました。フレッドも彼の妻もカナダ出身で、子どもたちのほとんどがアイオワで生まれています。彼はハイラムおじさんが別の現場に移ったとき、一緒に行ったのかもしれないと、注釈に書かれています。
ジェリーはフレッドの義理の兄弟というなら、フレッドの妻も混血なのでしょうか? それに彼女がカナダ出身なら、ジェリーはどうなのでしょう? その点については、触れられていません。